飲食店の経営において、最も重要なことは利益を残すことです。
利益が残らなければ、お店を続けることも難しくなりますし、あなたの生活も苦しくなってしまいます。
計画通り利益を残すためには、日々の売上やかかった経費など、お店を経営する上で発生する数字を正確に把握することが不可欠です。
そこでここでは、計画通り確実に利益を残すために把握しておくべき数字について解説していきたいと思います。
利益を残すために棚卸しが必要な理由
棚卸しとは、材料や商品などの量や状態を調べ、在庫を確認する作業のことです。
棚卸しが必要な理由は、正確な材料費をつかむためです。
そして、棚卸しの責任者は料理長ではなく店長です。
なぜなら、売上高と利益の責任は、料理長ではなく店長が負うからです。
飲食店の経営では、労働生産性や労働分配率が極めて重要な数値になります。
そして、これらの数値はすべて粗利益率から導き出されます。
つまり、この数値が正確でなければ、労働生産性も労働分配率も正確に把握することができません。
そして、正確な粗利益をつかむには、正確な材料費を計上しなければなりません。
当月受入高は、納品伝票を集計すれば分かります。
問題は、厨房内の冷蔵庫や倉庫などにある在庫です。
この在庫高は、棚卸しによって把握するしかありません。
毎月の仕入れ金額をそのまま材料費としているケースがありますが、これでは計数管理になっていません。
毎月の材料費と仕入れ金額はまったく別の数字です。
なぜなら、前月末の在庫量と当月末の在庫量が同じになることは、まずあり得ないからです。
材料費は、売上高に応じて増減する変動費です。
つまり、管理が可能な費用です。
しかも材料は、商品のクオリティーを決定する重要な要素なのです。
棚卸しが正確に実施されていない原因としては、以下のことが考えられます。
・材料が多すぎる。
・材料のストック場所が決まっていない。
・材料の梱包単位がバラバラで数量を把握しにくい。
これでは、棚卸しをするにしても時間がかかりすぎてしまいます。
そのため面倒になり、やらなくなってしまうのです。
正確な棚卸しを実施するには、棚卸しをしやすいシステムをつくっておくことが大切です。
棚卸しをやりやすくするためのポイントは以下の通りです。
・適正な標準在庫量を決めておく。
・棚卸表と材料単価表を準備しておく。
・材料のストック場所は常に整理整頓を心がける。
・材料の配列の順序と棚卸表に記入する順序を一致させる。
・材料の梱包の単位を統一する。
・液状(ソース、スープ類)の計算方法を決めておく。
また、棚卸し実施の注意点は次の通りです。
・ストック場所によって分担する。
・棚卸し担当者は、カウント担当者と記入者の二名一組とする。
・棚卸表は冷凍品、冷蔵品、缶詰など、部門別・場所別に用意する。
・カウント担当者と記入者は、品名、量を互いに復唱しながら集計する。
食材の品質チェックと正確な発注も、棚卸しの重要な目的です。
特に、材料に生鮮品の多いお店の場合、在庫ロスが出やすくなります。
材料の品質を落とさないためには、過剰な在庫量を持たないことと、先入れ先出しの鉄則を守ることです。
先入れ先出しは、材料の納品時から守らなければ実現できません。
納品時には、新しい材料を奥のほうから並べ、古い材料は手前に並べます。
この手順を守らない限り、ロスはどんどん拡大してしまいます。
納品時の検収には、検数・検量、検質、検算の三つがあります。
まず検数・検量で注意することは、必ず現品に当たって確認することです。
納入業者に悪意がなくても、ミスは常に発生する可能性があります。
数や量のミスは、発注書と納品書を見比べても発見できません。
現品に当たるということは、材料の品質の確認にもなります。
数と量をチェックすると同時に、品質も確認する習慣をつけることが大切です。
特に生鮮品の品質は重要なので、新人やパートなどに任せてはいけません。
材料によっては、廃棄部分が大きい場合もあります
原価率を上手にコントロールするために把握すべき数値とは?
飲食店にとって材料費は、人件費とともに最も大きな割合を占める費用です。
また、売上高から材料費を引いたものが粗利益高で、人件費、光熱費、家賃などの費用はそこから支払われます。
そうして残ったものが利益となります。
利益を確保するためにも、材料原価率をできるだけ低くしたいところですが、なかなかそうはいきません。
お客様にとっては原価率が高いほうが、お値打ち感が高くなるからです。
通常、原価率は個々の商品によって違います。これが大事なポイントです。
これを確認するには、売上高ABC分析と粗利益ABC分析をして比較してみるといいでしょう。
単純に考えれば、売上高が大きければ粗利益も大きくなるはずです。
しかし、現実にはそうはなりません。
その理由は、各商品の原価率が違うからです。
各商品の原価率が異なる理由は、そうしなければお客様にお値打ち感を訴求する商品をつくれないからです。
商品のコストに一定の原価率を掛けて売価を決定する原価主義では、お客様の支持は得られないのです。
なぜなら、お客様の感じる値頃感を無視しているからです。
お客様に確実に支持されるためには、まずは価格を決めなければなりません。
お客様が買いやすい売価を決定し、そのために必要な原価を算出します。
そして、その原価の範囲内で最も付加価値の高い商品に仕立てるべく努力します。
そうしてはじめて、お客様の消費動機に確実に対応できるのです。
原価は、季節や材料の需給関係などで常に変動するものです。
つまり、一定の原価率を守ろうとすれば、売価も常に変動してしまうことになります。
そんなことが通用しないことは、いうまでもありません。
しかし、原価率をできるだけ低く抑えようとする意識が強すぎると、どうしてもお客様不在のコントロールに陥ってしまいがちになります。
原価率のコントロールでは、このことを常に頭に置いておく必要があります。
個々の商品の原価率を単純に下げるだけでは、お客様離れを招いてしまうだけなのです。
各商品の原価率を個別に決めなければ、つくるたびに原価率が変わってしまうことになります。
このあらかじめ決められた原価率を標準原価率といいます。
個々の商品は価格、原価率ともに違うので、どの商品がどれだけ売れたかで、トータルの原価率が違ってきます。
このトータルの原価率は簡単に計算できます。
商品ごとに標準原価を出し、販売個数と掛け合わせます。
この金額をトータルしたものを売上高で割れば、トータルでの標準原価率が算出されます。
ただし、これはあくまで標準の原価率であり、実際にかかった原価率と必ずしも一致しません。
材料には、調理中や在庫でのロスがつきものだからです。
そのため、マニュアルの順守や正確な棚卸しによって、個別標準原価を正確に守る必要があります。
これは適切に原価をコントロールするためにおこないます。
経営者にとって最も重要なことは、毎月の材料費予算の管理なのです。
一般の飲食店の場合、メニュー品目数は少なくても30~40品目はあります。
しかも、それぞれ原価率の異なる商品で、売れ行き個数も一定ではありません。
その上で正確に予算を達成するのは、かなり難しいことといえます。
そこで、過去の販売データの蓄積が非常に重要になってきます。
「どの時期にどれくらいの個数が売れるのか」「売上高と粗利益に対する貢献度はどうなのか」これらのデータを積み重ねていくことで、材料費予算の確度が高まっていくのです。
これらのデータは、毎日の売上げ伝票の整理や、売上高、出食数、粗利益の各ABC分析を重ねることで簡単に得られます。
原価率のコントロールで、まず取り組まなければならないのは材料費予算を達成するためのコントロールです。
つまり、個々の商品の原価率を変えなくても、出食数をコントロールすることで、目標とする総材料費率に近づけることができるのです。
そこで知っておくと便利なのが、材料費率の相乗積の考え方です。
材料費率の相乗積とは、各料理部門の売上高構成比とそれぞれの材料費率を掛け合わせた数値のことです。
予算の総材料費率は相乗積の合計なので、そこから逆算すればどの部門の材料費率をどれくらい調整すればいいのかをつかむことができるのです。
二つ以上の部門の材料費率を調整する場合は、まずこれまでの経験データと標準原価率を考慮して、仮定の材料費率を立ててみます。
次に、各部門の売上高構成比と総材料費率が決まっているので、調整すべき部門の相乗積の合計を求めます。
その上で、仮定の材料費率の相乗積を算出し、その相乗積の合計と、あるべき相乗積合計からすでに決まっている部門の相乗積を差し引いた残りの数値を比較します。
その結果から、各部門とのバランスを調整していきます。
正確な発注量を把握しロスを極限まで減らす方法
正確な在庫量がつかめなければ、正確な発注量は決められません。
だから棚卸しが重要になります。
棚卸しは毎日実施するのが理想的ですが、生鮮品でなければ毎日でなくても発注や在庫の品質管理に支障が出ないことも多いです。
正確な棚卸しができていない限り、正確な発注は実現できません。つまり、ロスの発生をくい止めることができないということです。
棚卸しと発注業務で重要なポイントになるのが、標準在庫量です。
適正な在庫量は、次の三つの条件を満たす量のことです。
①品切れを起こさない。
②過剰な在庫量にならない。
③材料の品質が劣化しない。
この量は、お店の売上高予測と、業者の配送スケジュールによって決められます。
お店のメニューや規模、来客数の変動傾向によって異なりますが、目安は週一回配送の材料については、一週間の使用量プラス三~四日分の在庫量です。
日配や週に二~三回の配送の場合は、出数予測に20~30%程度上乗せした量が発注の目安になります。
実際は、品切れが怖いため、多めに発注してしまう傾向が強くなります。
しかしこれでは、品切れと過剰在庫のコントロールがうまくできないため、材料の品質劣化や腐敗などのロスを発生させてしまいます。
また、在庫量が多くなればなるほど棚卸しが面倒になります。
すると、ますますいい加減な発注になってしまう悪循環に陥ってしまうのです。
適正在庫量のコントロールは、正確な棚卸しを確実に実行することで、必ず実現できます。
また、最近はPOSシステムを導入する飲食店が増えています。
POSにすればすべてのメニュー出数が確実に分かるから、店長の出数予測もぐんと楽になり自動発注システムにも活用できます。
しかし、自動発注システムは万能ではありません。
このシステムを正確に稼働させるには、正確な棚卸しと正確なデータの入力、そして一品当たりの正確な使用量が前提になります。
機械に頼りすぎると必ず隙が生まれます。
さらに、システムに依存してしまうと、材料の先入れ先出しの原則が崩れやすくなります。
結局、ミスを的確にカバーできるのは人間の判断力なのです。
材料の納品伝票の扱いも重要なテーマになります。
一般的に、飲食店の月次収支では、売上高はその月の分が計上されるのに対し、経費については支払いが発生した月に計上されます。
つまり、当月の売上高に対して、別の月の経費が計上されているのです。
これでは、経営者が正確な月次収支をつかむことができません。
売上高に対する正確な経費率を毎月把握するには、まず納品伝票を毎日集計する必要があります。
そして、その数字を週単位で売上高と対比させるのです。
こうすれば、週単位で問題点を発見できるので、傷口が広がらないうちに解決策を打つことができます。
従来の月次損益は売上高の予算管理には適していますが、短期的な数字の管理には問題があります。
たとえば、実際には材料費が不自然に多くかかっていても、その月の時点では発見できない可能性が高くなります。
通常、月次損益がまとまるのは翌月なので、その時点で発見しても損失は防げないのです。
お客様に支持される適正な人件費とは?
一言に飲食店といっても、お店によって営業方針に違いがあります。
たとえば、喫茶店は材料費率が低く抑えられますが、客単価も低く粗利益額も少なくなります。
そのため、対売上高の人件費率は高くなります。
反対に、焼肉店のように材料の品質で勝負しなければならないお店の場合、材料費はどうしても高くなります。
しかし、客単価が高いので粗利益の絶対額は確保できるうえ、加工度が低く人員が少なくて済むため、人件費率は低く抑えることができます。
このように、適正な人件費率は業種業態によって変わります。
適正な人件費率を考えるには、お店の付加価値として、材料費との総和で考えるべきです。
この材料費と人件費を合わせた費用をFL(フード・レイバー)コストと呼びます。
材料費と人件費は、飲食店の総原価のうち、最も大きな割合を占める費用です。
店舗運営上、最も重要な数字となります。
単純に考えれば、この二つの原価が低ければ低いほど利益が上がります。
しかし、お客様の側からすれば、二つの原価が高いほど付加価値が高くなります。
そこで、お店の付加価値として、二つの原価をトータルで考える必要が出てきます。
一般的には、材料費と人件費の対売上高比率の合計で、60~63%前後が適正原価とされています。
どんなに高くても65%程度で、70%では経営が成り立たちません。
なぜなら、どんな業種業態でもお店を営業するには、諸経費と初期条件が必ずかかるからです。
材料費と人件費がお店の付加価値となる理由は、飲食店の価値は商品、サービス、雰囲気の三つの要素の総合力で決まるからです。
そして、通常の営業でかかる費用は、商品とサービスの付加価値分ということになります。
人件費は、飲食店にとって頭の痛い問題です。経営者ならだれでも、減らしたいと思っているでしょう。
商品のクオリティーを落とすわけにはいかないから、削れるのは人件費ということになります。
パートやアルバイトを導入して人件費を変動費化し、上手にコントロールすることは絶対に不可欠です。
しかし、数字の管理だけに目を奪われてしまうと、お客様の満足を見失ってしまいます。
経費コントロールでは、これが最も危険な落とし穴です。
お客様を満足させてはじめて、原価をコントロールできます。
お客様を納得させることのできる原価が、サービス業としての適正原価となるのです。
たとえば、いくら商品の価値があっても、サービスがダメではお客様の支持は得られません。
逆も同じです。結局、飲食店の付加価値は二つの原価のバランスの上に成り立つのです。
二つの原価の配分はお店の売り方、つまりコンセプトによって変わります。
そのため、コンセプトが曖昧では、的確なコントロールはできません。
正しく人件費を管理するために必要な知識とは?
スタッフ数を単純に頭数でとらえていては、来客数に応じた適切な人員配置はできません。
人件費管理は、まずスタッフ数を換算人員で考えることからスタートします。
換算人員とは、一日一人の標準労働時間を決めて、標準労働時間のスタッフが何人働いたか計算する考え方です。
一般的には、1日8時間、1カ月25日間労働としていることが多いです。
スタッフ数が適切かどうかは、スタッフ一人当たりの労働成果で考えます。
その基本的尺度とされるのが、労働生産性です。
労働生産性とはスタッフ一人当たりの粗利益高のことです。
これは、スタッフ一人が一カ月に稼いだ金額を表し、その額は給与水準と利益水準を決定します。
一般的に適正な利益を確保するためには、人件費の2.5~3倍の粗利益高が必要とされます。
これが労働生産性の目標額になります。
これを人件費率の視点から見ると、粗利益高の33~40%の範囲内に収めるのが適正ということになります。
労働生産性を上げるには次の四つの方法があります。
①売上高を大きくする。
②粗利益高を大きくする。
③スタッフ数を減らす。
④省力機器を導入する。
このうち、粗利益高の拡大と省力機器の導入は経営トップが決めることです。
そして店長の責任は、売上高の拡大とスタッフ数の削減です。
売上高の拡大は販売促進努力、スタッフ数の削減は客数に応じた適切な人員配置が必要になります。
労働生産性は一カ月単位で示される数値のため、現場の店長には扱いにくい数字となります。
特に、一時間当たりの管理を重視する、お店の人件費コントロールに直接使うことはできません。
そこで、別の尺度として、一人一時間当たりの粗利益高を示す人時生産性が使われます。
この目標額は、平均時給の2.5~3倍の粗利益高です。
労働生産性と人時生産性では、粗利益高が重要になります。
これは、これらの生産性が人件費との比較に用いる指標だからです。
売上高のうち、お店の努力によって創造する付加価値は、直接コストである材料費を引いた粗利益です。
粗利益率は業種業態によってかなりの違いがあるため、あらゆる業種業態で人の効率を計る尺度になるのです。
しかし、飲食店の運営で最優先されるものは、お客の支持度である売上高です。
そこで、店長の現場管理の目標値として用いられるのが人時売上高です。
人時売上高は、一人一時間当たりの売上高を示します。
この数値は高いほどよく、客単価の高い業態のほうが高くなります。
一般的なパートやアルバイト中心のお店の場合、目標額は4000~5000円です。
人の効率を管理するには、人時接客数もチェックする必要があります。
人時接客数とは、スタッフ一人一時間当たりの来客数のことで、接客生産性、労働指数とも呼ばれます。
客単価の低いお店は、スタッフ一人でサービスできる客数を増やす必要があります。
人件費率の適正値を求める指標を労働分配率と呼びます。
労働分配率とは、粗利益高の中に占める人件費の割合です。
粗利益高が基準となる理由は、材料費以外の全ての費用は粗利益から支払われるからです。
そして特に重要となるのが、人件費の支払い能力です。
つまり、労働分配率から適正人件費の枠を決定します。
人件費を特別に扱う理由は、お店の収益に大きな影響を及ぼすからです。
一般的に労働分配率の適正値は、40%前後が限度とされています。
人件費を無駄にしない月間人件費予算の立て方
来客数に応じたスタッフの人員配置計画をワークスケジュールといいます。
飲食店には、季節、月、曜日、時間帯によって来客数に波があるので、常に効率的な人員配置を行う必要があります。
そして、スタッフの人員配置は、お客様の満足を前提にしなければなりません。
そのため、適正な人員配置は必ずしも、売上高の増減と比例しません。
売上高が高くなる時は人件費の効率がよくなりますが、売上高が低くなると効率は極端に悪くなります。
しかし営業するなら、お客様の入りが悪くても、一定の人数の人員を配置しておく必要があります。
変動する各月の人件費予算を、適正人員を守りながら合理的に立てる方法は、人時売上高を基準にする方法と、人時接客数を基準にする方法の二つがあります。
人時売上高と人時接客数
まず、人時売上高を基準にする方法を説明しましょう。
この方法は、スタッフ一人一時間当たりの売上高を基準とするため、各月の売上高の変動に対応し、予算と実績の誤差は小さくなります。
ポイントは、各月の正確な売上高予測と、季節変動に合わせた各月ごとの適正な人時売上高の設定です。
これをおこなうには、少なくとも過去三年間のデータを分析する必要があります。
次に、人時接客数を基準とする方法です。
違いは、計画労働時間数を求める基準として人時接客数を使うだけです。
つまり、各月の来店客数を基本として算出するものです。
本来、予算は達成しなくてはなりませんが、実際にはなかなか予定通りにはいきません。
来客数が予想以上に多い日もあれば、反対の日もあります。
しかし、月末の数字はコントロールした結果でなければなりません。
それには、経営者は毎日の業績とその日までの累計実績を、常に正確に把握しておく必要があります。
そして、そのために必要なのがデイリーチェック表です。
人時売上高と人時接客数は、このチェックのために不可欠の指標でもあります。
そのため、デイリーチェック表が有効なチェックとして機能するためには、、、
①標準労働時間数
②目標人時売上高
③目標人時接客数
以上の三つが設定されていなければなりません。
正確に売上を予測する日別売上計画の立て方
売上予算の基本は日別売上計画です。
日別売上計画を立てるポイントは、飲食店の売上高は曜日によってパターンが変わることです。
そのため、月間売上予算を立てたとしても、単純に営業日数で割るわけにはいきません。
日別売上計画を立てる4つの方法
①前年同月同曜日の売上高に、今年の対前年比目標伸び率を掛ける。
②前年同月度の曜日別平均売上高に今年の対前年比目標伸び率を掛ける。
③過去二期同月度の曜日別平均パターンを指数化し、それをもとに算出する。
④過去二期同月度の各月売上げ傾向をそのまま反映させる。
②の前年同月度の曜日別平均売上高に今年の対前年比目標伸び率を掛ける方法には、各曜日と祝日ごとに算出する方法と、平日、土曜日、日曜・祝日の三分類で算出する方法があります。
平日の各曜日に大きな波がなければ、後者の三分類で算出して構いません。
手順は、まず前年同月度の月間売上高を曜日別に分類し、曜日別売上高合計を出します。
これを前年同月度の曜日別合計日数で割れば、各曜日の一日平均売上高が出ます。
この各曜日一日平均売上高に対前年比目標伸び率を掛ければ、今年度の各曜日別計画売上高が算出されます。
③の過去二期同月度の曜日別平均パターンを指数化する方法では、まず前年と前々年の同月度の日別売上高を月初めから月末まで順に並べます。
次に、両年度の平日、土曜日、日曜・祝日の売上高合計を算出します。
この合計額をそれぞれの曜日別合計日数で割ると曜日別平均売上高が求められるので、平日の平均売上高を1として、土曜日、日曜・祝日のパターンを指数化します。
端数を四捨五入するため月次予算に対する誤差が生じますが、その誤差は月末の予算で調整します。
また、日別売上高には曜日以外にも細かい変動要因があります。
たとえば、給料日の前後や、月の上・中・下旬の特定の曜日による変動です。
その傾向が顕著な場合は、それらの傾向を加味して予算を立てる必要があります。
④の過去二期同月度の各月売上げ傾向をそのまま反映させる方法は、過去二期分の同曜日の売上げ傾向が、直接各日ごとに反映される方法です。
作業は少し繁雑になりますが、最も確度が高く、かつ使いやすい予算になります。
売上高は一日で見ると、時間帯によっても変動します。そこで、一日の売上げを時間帯別にも管理していく必要が出てきます。
そのための基礎データとなるのが、「月間時間帯別売上高統計表」です。三時間ごとに区切った各時間帯を利用動機別に分類すると、次のようになります。
・8時~11時・・・モーニングタイム
・11時~14時・・・ランチタイム
・14時~17時・・・ティータイム
・17時~20時・・・ディナータイム
・20時~23時・・・ナイト
・23時~2時・・・ミッドナイト
この時間帯区分は一般的なレストランの場合で、業種業態や立地条件によっては、利用動機と時間帯の取り方を変える必要があります。
どの時間帯にお客様のどんなニーズがあるのか、お客様の消費行動をつかみながら確実に売上げを挙げていくには、時間帯別管理が不可欠となります。
データの分析には、次の三つの視点が必要です。
①週間・月間の時間帯別売上高の推移
②月間の曜日別・時間帯別一日平均売上高
③時間帯別一日平均売上高の年間推移
それぞれ売上高、客数、組数、客単価をチェックしますが、このチェックを続けていくと時間帯ごとの問題点が浮かんできます。
こういう地道な改善こそが客数を増やし、さらに固定客を増やしていくのです。
経費のムダを徹底的になくす方法
飲食店の運営にかかる諸経費は多岐に渡ります。
そのため、漠然と削減したいと思っていても、実現することは難しいでしょう。
ムダをなくすには、まずどこでムダが発生しているのか、どのムダが大きいのか、削減しやすいムダはどれか、一つひとつの費用の項目ごとに検討する必要があります。
諸経費の中で、最も大きな比重を占めるのは、電気・ガス・水道といったエネルギーコストです。
エネルギーコストの対売上高比率は、5~8%程度が標準です。
これは、飲食店が適正な経費を使って得られる利益とほぼ同じ金額です。
そのため、このコストのコントロールに重点的に取り組む必要があります。
エネルギーコストのムダは、どこのお店にもあるものです。
たとえば、水道の出しっ放しや水漏れといった水
道料金のムダ。照明の消し忘れや、フィルターの汚れたクーラー、開けっ放しの冷蔵庫などの電気料金のムダ。
口火を点けっ放しにするなどのガス料金のムダです。
お店の中をじっくり見渡してみれば、毎日の営業の中でさまざまなムダがあることに気がつくでしょう。
そして、これらのムダが積み重なることで、利益を圧迫していくのです。
コスト管理では「これくらいは」という考えではいけません。
利益は、細かい努力を積み上げた結果なのです。
ただし、必要以上にケチってもいけません。
たとえば、エアコンの効きを抑えたり、トイレの流水量を少なくしたりするお店もあります。
こういうことをすると、結局はお客様を失うことになってしまいます。
エネルギーコストは、売上げを上げるために必要な経費です。
経費の削減は、ケチることではないことに注意が必要です。
エネルギーコストの管理では、まず使用量が売上高に対して適正かチェックする必要があります。
そのためには、売上高に対応したそれぞれの標準使用量を設定しておく必要があります。
毎日注意して三カ月の統計をとれば、標準使用量を割り出すことができます。
エネルギーコストの管理はずさんになりがちですが、これは費用が公共料金のため、「かかった分を支払う」という感覚になっているからです。
エネルギーコストは毎月一定ではありません。
その増減が売上高に対してどうか、という視点からコントロールしなくてはなりません。
効果的にエネルギーコストを管理する基本は、店長自ら検針を行うメーターチェックです。
少なくとも週に一回、できれば毎日、同じ時刻に実施するのが理想的です。
週に一回の場合は、毎週同じ曜日の同じ時刻に実施します。
このチェックを実行すると、ムダによって使用量がかなり変化することがわかります。
それをスタッフに伝え、ムダの排除を徹底する習慣をつけるのも店長の仕事です。
メーターチェックで出た数字を標準使用量と照合し、異常値が発生していたら現場の状況を詳細にチェックします。
これによって、配線や配管の異常も早期に発見できます。
諸経費の中で、エネルギーコストに次いで重点管理の必要があるのが、備品、消耗品です。
特に食器は、どんなに注意して扱っても、必ず破損が発生します。
そして、問題はその破損による損失だけでなく、食器の不備による機会損失や作業ロスを招くことにあります。
たとえば、欠けた食器を使っていれば、最悪の場合お客様にケガをさせてしまう危険性もあります。
また、食器が不足していれば、ピーク時に必ず食器が足りなくなります。
洗い場も混乱し、汚れた食器を出して信用を落とすという危険性もあり得ます。
たんに金額として出てくるムダだけでなく、目に見えないムダについても考えることが大切です。
食器類は、種類別に必要数量を割り出し、常に標準在庫量を確保しておく必要があります。
必要数量はピーク時の客数、客席回転数、メニュー別販売個数で算出できます。
標準在庫量はその10~20%増しに設定するのが一般的です。
また、正確に管理するには、毎月の棚卸しが不可欠です。
紙ナプキン、トイレットペーパー、洗剤などの消耗品も同様に標準在庫量を設定します。
これについても毎月棚卸しを実施したほうがいいでしょう。
これら消耗品類は、客数によって消費量が変化することに注意が必要です。
各月の売上高に対する経費として管理するためには、棚卸しが絶対に必要です。
売上げ伝票をつける本当の目的とは?
売上げ伝票の最も大切な役割は、お店の営業データの収集です。
そして、営業データは二つに大別されます。
一つは、売上高や粗利益など、その日の営業実績です。
これは、営業日報の重要な数字となります。
そしてもう一つは、お客様に関するデータです。
どんなお客様が、いつ、どんな利用の仕方をしたかというデータです。
このデータを集計することによって、スタッフの配置や仕込み量の調整ができます。
また、自店のお客様の傾向をつかむことで、新商品の導入や雰囲気づくりなど販売促進に役立てることもできます。
一般的に売上げ伝票の目的は、お客様のオーダーを間違えないことと、お客様への請求モレを防ぐことです。
しかし、目的は他にもあります。
たとえば、レジの中の現金が、売上高と必ず一致するとは限りません。
釣銭のミスで、売上高と実際の現金残高にギャップが生じるのは、珍しいことではありません。
伝票がなければ売上高の詳細がわからないので、レジからお金を盗まれても発見できません。
売上高は、売上げ伝票一枚一枚に記入された金額の合計額です。
つまり、売上げ伝票がなければ、正しい売上高を把握することはできません。
次に、売上げ伝票に最低必要な項目を挙げましょう。
①日付
②通しナンバー
③テーブルナンバー
④品名、数量、金額
⑤小計・消費税等の合計金額
⑥来店時間帯
⑦一組の人数・性別(できれば世代別)
通しナンバーが必要な理由は、不正を防ぐためです。
かなりの項目数になりますが、必ず記入する習慣をつける必要があります。
項目をあらかじめ印刷しておけば、丸をつけるだけになるので簡単です。
また、売上げ伝票はお客様も見るということを忘れてはいけません。
伝票が油や汁などで汚れているお店もありますが、お店の清潔感はこういうところでも判断されます。
なぜ小口現金を正確に管理する必要があるのか
飲食店の現金管理は、まずレジの現金管理が問題になります。
レジには一日の売上げと釣銭が入っているので、金額としても大きなものになります。
また、正確な売上高が分からなければ、正確な収支はつかめないということにもなります。
飲食店の現金管理にはもう一つ、小口現金の管理があります。
小口現金とは、文房具や電球など、ちょっとした買い物をするために用意してある現金です。
小口現金は、文字通り金額は小さいです。
1000円単位の現金があればとりあえず間に合う用途のため、多額の現金を用意しておく必要がないのです。
そのため飲食店では、この現金管理が非常にずさんです。
たとえば、大した金額ではないからと、レジの中の現金を流用してしまうケースも多いです。
そもそも小口現金を別に用意していないのです。
しかし、こういうレジから流用するやり方は改めなければなりません。
なぜなら、このような流用を続けていると、スタッフの現金管理に対する認識が甘くなっていくからです。
本来レジとは、厳正に管理されなければならないものです。
釣銭のミスが問題にされる理由は、お客様に大変な迷惑をかけてしまうからだけではありません。
現金残高の不足が続いた場合は、スタッフ同士が疑心暗鬼になって、チームワークが壊れてしまうことにもなりかねないのです。
お金は、非常にデリケートな問題を引き起こします。これは、金額の多少には関係ないのです。
レジから無自覚に流用していては、現金残高の過不足に対しての認識が薄れてしまいます。
また、このようなルーズさは不正を招く要因にもなります。
小口現金はレジとは別にして、毎月金額を決めて用意し、きっちりと管理することが大切です。
そして、その使用に当たっては、店長の月次報告の一つでなければなりません。
キャッシュフローを正しく理解し経営を楽にする方法
キャッシュフローとは、減価償却費と純利益を足した金額のことです。
つまり、手元にあって自由に使える金額のことです。
ただし、実際に現金が残るかどうかは借入金の金額によります。
減価償却費は実際の支出を伴わない費用です。
帳簿上は経費として処理されますが、手元にはその現金が残ります。
そのため、通常は借入金の元金の返済に減価償却費が当てられることになります。
返済額が減価償却費の枠だけでは返済しきれない場合は、純利益も返済分に回さなければならなくなります。
つまり、借入金の元金を返済できる限度額はキャッシュフローということになります。
そのため、毎月の返済金額がキャッシュフローを超える借り入れをした場合、資金繰りに行き詰まる危険性が非常に高まります。
お店の内装や厨房機器などは、何年も使用可能な固定資産になります。
それを使って、何年も利益を生み出すことができるということです。
それならば、内装工事や機器の購入をした年に一度に損金処理してしまうのは、著しく不合理ということになります。
資産の稼働期間に分けて、損金として落としていくのが合理的です。
そこで税法では、建物や設備機器について一定の耐用年数を定め、その年数に従って損金処理をしていく金額を決めることになっています。
一般的に、内装関係の耐用年数は7年、厨房機器は5年が償却期間の目安です。
ただし、これらの資産の取得価額の全額が償却できるわけではありません。
これは、最後はスクラップにして売ることができるという考えがあるためで、取得価額の10%は残存価額として残されます。
つまり、取得価額の90%で償却の計算をするわけです。
実際には、耐用年数をすぎた後、残存価額の半分までの償却が認められています。
毎年の償却額を計算する方法は、主に二つあります。
その方法は、毎期均等額を償却する定額法と毎期一定率で償却する定率法です。
原則として、個人経営の場合は定額法、法人の場合は定率法と定められています。
償却方法を選択したい場合は、税務署に届け出る必要があります。
これが、減価償却費が支出を伴わない費用となる理由です。
経費に算入すべき現金は、最初の年に支払ってしまっているということなのです。
経費として計上できるのに支出を伴わないため、税金のかからない利益と考える人もいます。
しかし、最初の投資を回収するまでは、利益とはいえません。
また、償却期間よりも借入金の返済期間のほうが長いケースの方が一般的です。
そのため、キャッシュフローの余った現金は残しておかないと、償却後の元金返済に困ってしまうことになりかねません。
飲食店経営で確実に利益を残すために
確実に計画通りの利益を残すためには、このようにたくさんの数字を管理する必要があります。
確かに面倒ではありますが、これらの数字を管理していないと「気がついたらお金がない」なんてことにもなりかねません。
確実に成功を手にするためにも、ぜひとも取り組んでみてくださいね。