創業時には何かとお金が必要です。自己資金だけで準備できればいいですが、実情としてはなかなか難しいでしょう。
そのため創業時には、ほとんどの人が銀行などに融資の相談にいきます。
しかし、銀行はそんなに簡単に大金を貸してはくれません。
銀行内では「窓口に直接来る新規先はまず疑ってかかれ」ということが言われています。
銀行は晴れたときに傘を貸して、雨が降ると傘を貸さないと言われます。
しかしこれは、先行きが見えない会社にお金を貸しても返ってこない可能性があるからです。
特に実績も無い、創業した手の会社では大金を借りることは出来ません。
先行きが不透明な会社に簡単にお金を貸していたら、銀行はすぐにつぶれてしまうのです。
銀行融資で怪しまれないためには
銀行に怪しまれては融資を受けることは出来ません。
銀行に怪しまれないために、まずは銀行に口座を作らなくてはなりません。
融資を申し込む前に銀行口座を作ることが必要です。
つまり融資が先ではなく、口座開設が先だということです。
作る口座は当座預金である必要はありません。普通預金で大丈夫です。
当座預金の必要性も、時代の流れから薄れてきています。
小切手・手形の発行手数料もどんどん高くなっています。
手形に関しては銀行側も簡単に発行しなくなっているのです。
口座を開設し、売上等の入金実績、家賃や公共料金の支払いなどある程度の営業実態がみえてくると、金融機関の方からアプローチしてくるようになります。
ただし最初は企業規模も大きくないでしょうから、信用金庫や第二地銀の方がアプローチされやすいといえます。
口座開設と融資の順番を間違えると、大きな違いを生んでしまうので注意してください。
また、商工会議所や商工会などで開催される、各種セミナーに参加することをおすすめします。
青年部などに地元の銀行員が参加していれば、所属することにより自然に出会うことができるのです。
初めてやってくる銀行員は「どのようなビジネスを行っているのか」「取引先はどんなところか」「月商はどれくらいか」このような内容をヒヤリングしてきます。
また従業員をすでに雇っている場合は、経費も詳しく聞いてくるかもしれません。
その中で重要となるのが資金繰り表です
銀行から融資を受ける際に必要な資金繰り表とは
銀行で運転資金を借りる場合、必ず必要になるものに資金繰り表というものがあります。
資金繰り表とは、ある一定の期間のキャッシュフローを月次で管理するための表になります。
キャッシュフロー経営ということが、注目されるようになりました。
これは大企業に限らず、中小企業にとっても大切なことです。
日本の会計制度は「発生主義」を採用しています。
発生主義とは、発生したらすぐに計上するというものです。
日本の会社がすべて「現金決済」であれば、キャッシュフローはあまり考える必要はありません。
しかし実際の企業活動は、掛売りや手形などが多く、現金がすぐに入るものは少なくなっています。
また、売上が現金として入ってくるよりも、外注費などの支払いを先に起こさなければならないケースがほとんどです。
これが積み重なると資金不足となります。しかも、売上が大きくなればなるほど資金が不足するのです。
このような現金の流れの管理をしっかり行う経営を、キャッシュフロー経営といいます。
そのために必要なのが資金繰り表なのです。
銀行内で社内稟議害を作成するには、決算書類と資金繰り表が必須の資料となります。
つまり、銀行で融資を受けるには、資金繰り表を作成できなければならないのです。
最近の会計ソフトには、資金繰り表の作成が機能としてついているものもあります。ぜひとも利用しましょう。
1、運転資金と設備資金の基本を理解する
運転資金とは
まずは、運転資金について解説していきます。
運転資金とは言葉通り、事業を運転していくために必要な資金のことです。
例えばモノを販売している会社では、販売する商品を仕入れなければなりません。
ほとんどの場合、売れる前に仕入れて一定の在庫を保有しておく必要があります。
つまり、仕入れのために先にお金がいるということです。
さらに、その在庫品を置くスペースを借りたり、販売する店舗を借りたりするお金も必要になってきます。
システム開発の業務の場合は、エンジニアに先に給与もしくは外注費を支払います。
先にお金を支払い完成させた商品を納品後に代金回収となるのです。さらに、作業スペースを借りる家賃も必要になります。
このように、会社を運営する上で必要な費用を賄う目的で融資を受ける場合を運転資金といいます。
設備資金とは
次は、設備資金について解説していきます。
設備資金とはモノに付随する資金の事を指します。
具体的には社用車や商品を製作するための機械、事務所等を借りるための敷金・礼金などが設備資金に分類されます。
なぜ、運転資金と設備資金を明確に分ける必要があるのでしょうか。
その理由は、運転資金と設備資金では手続き上の違いがあるからです。
設備資金については明確な根拠が必要となります。
設備の購入先からの見積書などが必要となりますし、流用はできません。
原則、金融機関から購入先への振込みとなります。現金支払であった場合は、領収書を徴求したりします。
運転資金に比べて設備資金の方が条件がいいということは無いのです。
手形割引とは
銀行の短期運転資金の貸出の形態に、手形割引というものがあります。
これは手形を受け入れ、その金額の範囲で、手形の期日まで融資を行うというものです。
手形を発行している会社が優良企業であれば、その手形の入金日に返済になるので回収確実な融資というわけです。
しかし、万が一手形発行企業が不渡りを出すようなことがあれば、一気に回収不確実な融資となります。
その場合は、融資を行っている企業に手形を買い戻してもらうことになるのです。
これを防ぐ為に、銀行は信用調査というものを行っています。
手形の発行企業が大丈夫かどうか、照会をかけるのです。ただし、実際に信用に不安がある会社に対する信用調査をかけたとしても、不安がありますなんていうことはありません。
そのため、単なる気休め程度にしかならないのです。
金利について
金利には短期金利と長期金利という区分の仕方と、変動金利と固定金利という区分の仕方があります。
まずは、前者の区分から解説していきます。
短期金利とは、1年未満の短期資金に適用される金利のことで、長期金利とは1年以上の融資に適用される金利のことです。
一般的には、短期金利の方が長期金利と比べて低い金利が適用されます。運転資金を借りる場合、短期と長期の2種類から選択できます。
しかし設備資金については、金額が大きくなるためほとんどが長期となります。
次に、変動金利と固定金利について解説します。銀行の通常の借り入れでは、ほとんどの場合変動金利です。
金融機関は預金だけにかぎらず、様々なところから資金を調達し融資を行っています。
そのため、金利が変動した時に融資金利の変更が遅れると、大きなロスを生むおそれがあるのです。
このリスクを抑えるために、通常は変動金利にしているという訳です。
銀行の貸出金利は0.125%刻み
銀行の貸出金利は、0.125%刻みとなっています。
これを表す「コンマイチニーゴー」という言葉が、銀行内部では飛び交っているのです。
なぜ0.125%刻みとなっているかというと、銀行が資金を調達する市場の金利が1994年まで1/32であったことが大きな要因となっています。
4/32で0.125%となるのです。銀行から貸出金利引き上げの要請があったときに、金利が0.125%刻みであることを知っているだけでも、交渉を有利に進める材料となるでしょう。
2,銀行融資の上限について理解する
金融機関は際限なく融資をしてくれるものではありません。
では金融機関の融資の上限は、どのように決まるのでしょうか。
制度融資や保証協会など借入れの種類により、金額の上限が設定されているものもあります。
しかし、原則的には業績や銀行の規模、支店の大きさにより上限が決まります。
さらに金融庁マニュアルに則り、借入金の内容やリスク等を総合的に判断され上限が決定されます。
格付けとは
2013年に大ヒットした銀行ドラマの中で、「実破にはさせない」と主人公が叫んでいました。
この「実破」という言葉は、銀行内部で頻繁に使われている言葉です。
「実破」とは格付けの一つを省略したもので、正確には実質破たん先といいます。
銀行は融資を行なう上で、融資先の資産査定を行い格付けします。
その格付け内容に対し金融庁が検査に入り、妥当かどうかチェックする決まりになっています。
銀行の査定が甘くないかどうかチェックし、甘ければ厳しくするのです。
ドラマの中であったように、銀行から見れば金融庁は反目する相手です。
検査で銀行の査定を下げられることは、銀行として極めて厳しい状況に置かれることになってしまいます。
なぜなら格付けによって、新規融資が困難になることがあるためです。
金融機関の債権分類
格付けの中で、最も良いランクは「正常先」です。
では、実質破綻先と正常先とではなにが違うのでしょうか。
ドラマの中でも出てきましたが、今度は引当金という問題が出てきます。
引当金とは、将来発生することが予測される損失、費用などの支出に備え、前もって準備する見積金額のことをいいます。
この引当金が格付けにより異なるのです。
金融庁の金融検査マニュアルでは、銀行の資産を融資先の格付けにより、四つの分類に分けることとしています。
その分類区分によって、引当金の割合が異なってくるのです。
そのため、正常先なのか実質破綻先なのかは大きな違いとなります。
与信権限と支店長権限
ここでは、銀行の支店長にはいったいどれくらいの権限が与えられているか解説していきます。
支店長の最も代表的な権限は与信権限です。
銀行内部で融資を行うことを与信といいます。
この融資を単独で行う権限を、支店長以上は持っています。
支店長にもランクがあり、旧都市銀行を例に取ると、本店営業部、東京営業部、大阪営業部などの支店長には何十億もの権限が与えられています。
しかし小規模店舗支店長になると、数千万円の権限しか与えられていないのです。
支店長の与信権限以上の与信行為を行う場合は、本部決済となります。
ある銀行を例に取ると本部は、融資部、業務融資部、審査部と別れています。
融資部は大企業、業務融資部は中小企業、審査部は要注意先以下の企業の融資を担当しています。
また、融資金額で部店長権限と本部申請が分かれているだけでなく、与信総額においても限度枠が設けられています。
さらに、与信総額が百億円を超える企業に対しては「合議」という制度もあります。
合議とは、融資部を所管する取締役と頭取、副頭取、専務クラスまでが一堂に話し合い融資決裁を行う制度です。
金額が大きい企業の破たんは、風評リスクや株主代表訴訟などのリスクを負います。
そのため、より慎重に審査するのです。
担保主義
「銀行は担保主義に走ったからバブル崩壊に伴い大打撃を受けた」
「企業の収益計画や中期経営計画等を適切に判断しないのが悪い」
なんて声を聴いたことがあると思います。
では、今は担保をどのように考えているのでしょう。
結論から言うと、今でも担保は重要と考えています。
担保があれば、与信行為を行う上で重要なポイントとなります。
担保がない融資で企業業績が悪化した場合、不動産担保がある融資よりも引当金を多く積み上げなければなりません。
不動産担保があるほうが、銀行にとっては好都合なのです。
銀行が不動産担保を考える場合、土地が基本になります。
工場等の建物は再利用するのが難しく、処分するためにかえってお金がかかる場合も少なくありません。
戸建て住宅のようにすぐに再利用できるものでなければ、基本担保価値としてあまりみてもらえないと考えたほうがよいでしょう。
融資と年商や与信総額との関係
銀行は、融資を行い返済を受け、また融資を行うという反復した行動を考えています。
融資を行う際は、融資を行う必要性があるのか、完済できるのかといった考え方で成り立っています。
つまり、売り上げ以上の融資は必要ないと考えているのです。
本来であれば、減価償却と経常利益で返済金が確保されます。
そのため、少なくとも年商以上の借入金は完済できないと考えています。
売り上げが横ばいで償却前利益10%、これが20年継続で完済といったところを上限値で考えています。
3、信用保証協会について理解する
中小企業が銀行に融資の申し込みを行うと、必ずといってよいほど保証協会融資をすすめられます。
それはなぜでしょうか。ここでは信用保証協会について解説していきます。
保証協会融資は優良非分類
今では保証協会融資が100%保証ではなくなり、一部銀行の負担部分があります。
しかし、従来は100%保証されていました。すなわち、回収不能になることがない融資だったのです。
そのため、回収リスクを他の融資と比較して10分の1の評価としていました。
また、保証協会に支払う保証料は顧客が負担します。
銀行にとってはダブルでお得な融資なのです。
保証協会融資は営業成績が高い
銀行にも営業を行なう課があり、営業成績に縛られています。
店ごとの目標及び評価点もあり、個人ごとにも表彰体系が存在します。
ここで一番評価されるのが、保証協会保証付きの融資です。
金額もありますが、保証協会保証付きの融資を行う新規取引先を増やすことの評価が大きいのです。
それに比べプロパー融資の短期資金などは、ほとんど評価されないのです。
信用保証協会の組織について
信用保証協会は、中小企業や小規模事業者が金融機関から事業資金を調達する際、保証人となり融資を受けやすくなるようサポートする公的機関です。
信用保証協会は原則、各都道府県に一つはあります。
信用保証協会保証付き融資は、銀行マンの営業成績の大きなポイントとなります。
あなたが融資の相談を行う場合も、使用を勧められるかもしれません。
信用保証協会団体信用保証協会制度
銀行に住宅ローンを申し込む際、ほとんどの場合団信というものに加入しなくてはなりません。
これと同様の制度が、信用保証協会保証付き融資を受ける場合にも存在します。
債務者もしくは連帯保証人が死亡や高度障がいになった場合に保険給付され、家族にその責任が及ばないようにする制度です。
特約料に関しては、もし繰上げして融資返済を行っても戻ってきませんので注意が必要です。
信用保証協会によって担保の設定方法が違う
実は信用保証協会によって、担保の設定方法が違います。
担保権者が銀行である場合と、信用保証協会の場合があるのです。
東京都信用保証協会や愛知県信用保証協会など多くの信用保証協会は、銀行が担保権者となり信用保証協会に優先権を与える方式をとっています。
それに対し大阪府中小企業信用保証協会は、信用保証協会が直接担保権者になります。
これにより具体的にどのような違いが生まれるか解説します。
銀行が融資を行う場合、企業が担保設定者になるときは、抵当権設定よりも根抵当権を設定する場合が圧倒的に多いです。
この方が信用保証協会にとっても、管理する事務手続きがなく好都合だからです。
ただし企業にとっては、保証協会に直に担保を設定してもらっていたほうが好都合なときもあります。
たとえば、信用保証協会で設定してもらっている担保は、どこの金融機関でも利用することができます。
A銀行での融資金額が返済等により500万円減少している場合、根抵当権の担保余力がそのまま500万円となり融資の担保として利用することができます。
信用保証協会が直接担保権者の場合なら、企業が金融機関を変更したいと考えたときに、担保設定の変更を行うことなく利用できるという訳です。
4制度融資について理解する
新規借り入れをする場合などに、金融機関の担当者から制度融資を勧められることがあります。
ここでは制度融資とはどんなものか、どんなメリットデメリットがあるか解説していきましょう。
制度融資とは
制度融資とは、各都道府県や市町村と信用保証協会、指定金融機関の三社が協調して行う融資です。
中小企業向けに、利用しやすい制度が設けられています。
制度融資のメリット
制度融資のほとんどが、低金利や利子補給など利用者に有利な設定がされています。
利子補給とは、各地方公共団体から利息の一部を返金されるものです。
中小企業にかかわらず支払利息は非常に大きく、なるべく減らしたいものです。
その点からも制度融資はメリットが大きいといえます。
さらに、返済の据え置き期間が長めに設定されているケースもあります。
すぐに返済がはじまるものに比べ、余裕が生まれるためこのメリットも大きいと言えます。
制度融資は固定金利が一般的です。
原則として金利がいくら上昇しても、期限まで同じ金利が適用されます。
近年、低金利が長期化して金利が上昇することを忘れがちです。
しかし、一旦上昇し始めた金利は急カーブで上昇することもあるため、固定金利のメリットは大きいと言えるでしょう。
制度融資のデメリット
制度融資は原則として固定金利です。
そのため、経済情勢により今より金利が低下した場合でも、低下前の金利が維持されます。
これが一つのデメリットといえます。
また制度融資は、信用保証協会保証付きが原則となっています。
すなわち、信用保証協会に支払う保証料を負担しなくてはなりません。
プロパー融資と比較すると、費用がかかる点もデメリットといえます。
定期預金は有効か
融資を受けたけど、しばらく使わないので定期預金にしておく。
こんな行動を起こす中小企業の経営者が少なくありません。
また銀行の担当者から積立の依頼があったので、毎月行っているという方もいます。
これはあまり有効な手とはいえません。
できれば定期預金にはしないほうがベターです。
なぜなら、いざ使いたいときに、定期預金解約を拒まれることがあるからです。
担保にしてあるわけでもなく、何の権利もないのですが、本来拒むことができないはずの解約を阻止されるケースがあります。
銀行員の中には、「必要なときには融資しますので定期預金はそのままにしておいてください」とまで言ってきます。
資金繰りが厳しくなった時に使おうと思って蓄えていたのに、いざその時に使えなくては意味がありません。
どうしても定期預金にしたいのであれば、融資を受けていない銀行で作成することをお勧めします。
いかがだったでしょうか。融資を受ける上で、最低限理解しておくべきことを解説してきました。
最低限とは言え、ここで解説してきたことを理解しておけばきっと有利に交渉を進められると思います。
また、あなたにピッタリな融資を選ぶ基準にもなるでしょう。